ほとんどの歯科医師が直接自分の眼で見たことがない側枝(そくし)の貴重な画像をお見せしましょう

定義:「側枝 Accessory canal(s)とは主根管と歯根外表面を交通する枝を言う」.(歯内療法学術用語集;日本歯内療法学会)

これを分かりやすく言えば、根の中には神経が入っている根管という管が根の先まで通っています。神経を取るとそこは空洞になる為にその中を根管充填材という薬を詰めて封鎖するわけですが、根管というのは1本の根の中に大通りの他に枝道が何本もある事が殆どです.それが側枝です。とくに根の先の部分3mm近辺に多く集まります

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3D Interactive Tooth Atlas (Nissin) より許可を得て引用,改変 
                            
 それが何か悪い事をするかというと、その細い枝道の中にも神経が入っているのでそれを直視しながら完全に取り除き封鎖するという事は大変難しい処置になります。従来の根管拡大法ではほとんど不可能です。何処に開口部があるかは知らないで行っても“偶然に”根管充填剤がそこにはみ出す事もあります。しかしそのためには、化学薬品(次亜塩素酸ソーダ=NaClO=【ハイターと同じ成分】やEDTA等)を大量に長時間作用させなければなりません。アメリカでは1時間ぐらい加温しながら(加えるに超音波併用を推奨する人もいます)新鮮なNaClOを還流する方法を推奨している歯内療法専門医もいます。NaClOやEDTAはそれぞれ有機質を溶かす、硬組織を溶かすという働きをします。強力に根管内を溶かすと同時にまわりの象牙質を、弱くする事は海外の文献にも発表されています。わたしはそれが将来の歯根破折を起こす原因の一つになりうると考えています。ScoopOut法では拡大のための化学薬品は一切使用しない理由です。
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側枝の拡大、除去がうまくいかないと神経の取り残しが出来てその死骸をとり残すわけですから、レントゲンで見ても薬はちゃんと詰めてあるのに痛みが出たり歯根の側方や根の先に病巣の影ができる事があります。
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赤の矢印で囲まれた部分が術前に側枝由来と診断した病巣です
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矢印が
根管内から予想通り発見されたその側枝の入り口です


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 ScoopOutによって側枝を完全削除してMulti-Fiber post法で根管封鎖 術後1年ですが病巣が
ほとんど治癒しています。隣の6番も同様に治療して根尖病変が消失しているのがわかります。

それほど厄介な側枝ですが、根の中から肉眼や拡大鏡では絶対に見る事は出来ません。
こ れぞマイクロスコープの威力ですが、いくらマイクロを持っていても拡大を現在のMI
(最小限の侵襲)の理論(なるべく削らない、手を加えない治療を行うという考え)で行う限りほとんど不可能です。MIの根管拡大ではクラウンダウンという方法が主流です、すなわち根管の入り口を最も大きく削り、根の先に向うにつれてだんだん細く拡大すると言う方法です.即ち側枝が集中する歯根3mm付近は細い拡大のためにほとんどマイクロの光や、視野が届くはずがないからです(再根管治療ですでに大きく拡大されていれば別ですが)。下の画像は2010年6月1日に当院で治療した歯ですが、根管内部を拡大しているときに大通り(主根管)の根管充填材(根の中に詰める薬)を除去してもまだ横の壁に点状の根管充填材を認め、それで側枝(矢印の部分)を発見できたわけです。この後その点がなくなるまで外壁に向けて拡大・除去し感染部分を取り除くことが出来たのです。私も歯科医師になって初め ての貴重な経験でした。
別の症例ですが、30倍のマイクロで行った恐らく世界初の側枝の拡大の動画をご覧下さい。
 


 2010.6.1.10:08 
Patient Y.S  upper right 2nd premolar
Probably the image of the world's first
accessory canal enlargement.

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CarlZeiss PicoMora/ハロゲン光源+21倍の画像です
 

別の側枝の画像です

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矢印の小さな白いがそうです.大きな◯は根尖孔です.(根尖孔に近いので根端分岐と呼ばれています)
ともに切削粉が詰まり白く見えているので見易くなっています.Zeiss Proergoに 3変倍
と言う装置を付けて倍率を上げて、約30倍の画像です.光源が暗いとこれほど鮮明には見えません。 キセノン光源のお蔭です。上記の画像と比較して格段に倍率が高く明るい事が分かると思います。(と言っても上の画像はZeissのマイクロで国内最高峰のプロ御用達IKEGAMI製3CCDカメラで撮ったものですが)
しかし側枝を発見しただけではまるで意味がありません.徹底的に取り除く事が理想です。”(意図的な側枝の拡大は不可能に近いので)側枝まであえて拡大する必用は無い”と主張する学者もいますが、
側枝由来の上述のような症例も決して稀なことではありません。
すなわち、感染物質の貯留部位である複雑な根管系の一つである側枝を除去することが出来ればそれに超した事はないのです。より予後が安定すること(再発のない医療)は間違いないからです。
複雑な根管系のお話し
 
側枝以外にイスムス、フィン、副根管、アンダーカットなどまだまだ感染物質の隠れ家がわんさかとあります、それについてのお話しです.2011年11月の日本顕微鏡歯科学会でもその一部を講演しました                  
           


                                                                        To be continued・・・・
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