マジックマージン(テクニック)とはインレー(詰め物)を歯に接着した後、金属と歯の接点を金箔細工のように金属のふちをのばして密着させ、隙間を無くし、再発の無い医療を達成するための一つの術式です。
1987年野辺山に八ヶ岳歯科を開設以前から綿々と行って来た再発のない医療のための手法の一つです。 しかし、機を見て敏なりの言葉通り”集患のために”最近始めた歯科医師がなんと多いことか!! 驚きました。例によって、ラバーダム、CT、マイクロスコープ、クラスB滅菌機などの集患対策キーワード(SEO対策)と同様の手法です。 数年前にはマジックマージンでの検索では辛うじて「八ヶ岳歯科」のみがヒットするだけでしたが、今ではゴロゴロ出て来ます。歯科大学の教育では全く触れられる事は有りませんから、当院のホームページから知り得た方が殆どだと思います。以前から(元祖のDr.HoboはUCLA(ポストグラジュエート)ではバーニッシュではなくホワイトポイントでのステップの擦り合わせでした・・・現在入手困難な坊主頭のバーニッシングバー(後述)を使用していないマジックマージンはまるで誤魔化しだと考えます) 万が一その用語を知っていた人も必要性からではなくSEO対策のために引っ張り出して(掘り出して)来たに過ぎません。本当に必要性を感じて,その手法を臨床で実際に行なっているとすれば=すでにそれからいっ時も離れる事は出来ない筈だからです。
信頼性の高いゴールドインレー(金のつめもの)について いま流行の白い詰めものやセラミックの物性は近年かなり向上しているもののそれらの最先端の歯科修復材料は未だに昔からあるゴールドの利点(鋳造精度,作りやすさ&耐久性)を追求し目指しているといっていいでしょう。 確実性のある修復法はゴールドのつめものであることは疑問をはさむ余地は有りません。しかし、金を使えばいいかと言うとまったくそうではありません。昔からある金のつめもの、かぶせもののフィット(精度)は下の画像のように決して良くありませんでした。それはマイクロスコープを使わないで肉眼で削り、印象(型どり)の材料もarアルジネート印象材と寒天(食品の寒天とほぼ同じもの)という精度の極端に悪い材料でおこなうという事と、実際に技工物を作る技工士さんもマイクロスコープを使わずに肉眼で作るためです(今でもその方法は大多数で行われていますが・・)。そうして作られたものはいわゆる金歯でしか有りません。 |
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この画像は他の歯科医院で詰められたいわゆる”金歯”ですがこれだけ自分の歯と隙間があれば、金合金を使った意味は全くありません。
多くの歯医者さん自身が虫歯になった時につめてもらっている(または詰めてもらいたいと思っている)のは、ハイブリッドインレーやセラミックインレーでも、CR(複合レジン、レジン充填)でもありません。他でもないそれはゴールドインレーなのです。その事からも何が本当にいいのかお分かりになると思います。
それは海外の歯医者さんでも同じのようです。
当院ではゴールドインレーを作る時は、マイクロスコープを使い精密に削り、レジン個歯トレーと最新のシリコン印象材を使い、技工士さんはやはりマイクロスコープを使い精密に作製しています。この技工物を見た同業の技工士さんはその精度に全員が全員ため息をつきます。
● 歯に対するフィットが悪いということは 歯とつめ物の間に分厚いセメント層ができてしまうということです。
強度や硬さがまったく違う素材が 歯と詰めものやかぶせものとの間に存在するのです。薄いほうがいいに決まっています。
● これがたとえ最新のセメントであろうと関係ありません。それは時間がたてば徐々にだ液の作用で溶けて空間があいてしまい、中に虫歯が出来て脱落してしまいます。詰め物やかぶせものが何年かすると取れてしまったり、痛くなったりするのはそのせいなのです。
● では、なぜインレーを作るときに金を用いるかといいますと、通常、補綴物と歯との境目は上記の方法をとって、どう精密に作製しても30ミクロン近い誤差が生じて出来上がってきます。それを解消することがゴールドインレーの場合のみできるのです。
それは装着した後にゴールドインレーのふちの金をグイグイ伸ばしてこの30ミクロンの隙間を埋めていくのです。それがマジックマージンテクニックという方法です(この名称は故保母須弥也先生が付けられたのですが、コンセプトは同じながら、オリジナルの方法とはかなり違いますので正確には modified magic margin technique と言うべきかも知れません)
金箔の製造
金は良く伸びます。 わずか1グラムの純金がかなずちでたたいてのばすと 畳一畳にもなるそうです。金箔の製法です(銀合金の場合はそれが不可能です、金属の物性が硬くて展延性(のびる性質)が無く、のびる前にすり切れてしまうからです)。 ● このマジックマージンを行わないゴールドのインレーは銀合金のインレーと何ら優位性はほとんどないと言っても過言ではありません。
症例: 上顎小臼歯のつめものの不適合とそれによる虫歯を見つけました。そのため銀合金インレーを除去したケースです。インレーを除去、虫歯に感染した部分を徹底的に除去し、すべてマイクロスコープ下で治療を行いました。
•マジックマージンテクニックを行う前の表面の拡大像です。肉眼では一見ピカピカですが、マイクロスコープで見るとわずかな段差があります。肉眼での治療ではこれ以上の事は不可能です。何も手を加えていない状態でこれだけの精度でできていなければ、いくらマジックマージンでもふちを延ばすことは出来ません。この精度は、専門家なら一見してわかりますが一流のスキルのある技工士さんがマイクロを使用して丹念に作製しなければとても出来ない精度なのです、特に小臼歯のMOまたはMODインレー(=このように隣り合った部分を含む形の事です)は変形しやすく製作が難しいのです。 上の画像のようなすきまだらけの詰め物をふち(と歯も!)を削って『すり合わせ』してごまかすのとは全く別物です。それをマジックマージンと誤解している歯医者さんもあるようですが・・・それもある意味マジック/妖術?(という意味もある)—と言えるかもしれません・・・
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セメントで装着した直後です.これだけ高倍率で見てやっと僅かな段差があるのが分かります