2011.08.1808:48
 MTAとは:主成分のポルトランドセメントに造影剤として酸化ビスマスを添加した歯科用覆髄剤で、穿孔部封鎖、逆根管充填等に使用する.水酸化カルシウムをしのぐ硬組織誘導能を示し、生体為害性が少ない事から、直接覆髄パーフォレーション(穿孔)部の治療に用いられる(日本歯内療法学会学術用語集から)


【症例1】
: 下の初診時レントゲン写真で上の前歯4本全て根尖孔がパーフォレーション(穿孔)して、それぞれの根尖部に病巣の黒い影が見えます。
初診時レントゲン
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このように、太くておまけに長い金属製の柱(メタルコア)が入っていれば、この時点で恐らく大多数の歯医者さんでは「うちではこれを取り除くことは不可能です、取れたとしても歯が割れる危険性があります。抜歯かそのまま放置して様子を見るしかありません」と診断されるでしょう。どうしても抜きたくないと言えば「最後の方法として、歯根端切除という方法が有ります。外科的に根の長さが短かくなりますが、先端を切断して、根の先から薬を詰める方法です」と説明されるでしょう。(しかし前歯では容易ですが、通常大臼歯の内側の歯根(舌側根、口蓋根)では難易度が高くなり、歯根端切除も不可能で抜歯と宣言される可能性があります。
短かくなるという大きな欠点ばかりではなく、除去できなかったメタルコアから根尖を切断したところまでに取残した根管内の感染物質の清掃は完全にできるはずもなく、根端窩洞に充填しても根管内の汚染物質は放置された状態で、埋葬(臭いものにふた)されたことになります。
しかし切断面に露出する根尖付近の神経の通路(側枝)やイスムス、フィンと呼ぶ根管内のすき間のような構造物等の封鎖が不完全であれば、そこから埋葬した(筈の)感染物質が漏れ出し、病巣が再発して失敗します。最低3mm切断する事が通説となっていますが、それとても統計的な一つの目安にすぎません。根管系の構造は簡単ではなく、人それぞれで出現する場所は様々です。マイクロスコープで確認しながらそれらを全て含む穴(根端窩洞)を開ければいいと言われますが、出血の中で見落とさない保証はありません。
歯根が長ければまだ耐えられるでしょうが、もともと歯根が短いなり歯周病で支持する骨が少ない場合は3mmも短くなれば致命的と言えるでしょう。
八ヶ岳歯科では近年旧来の外科的な歯根端切除は殆ど行っていません。
歯内的歯根端切除(当院オリジナルの、根管内から行う非外科的な歯根端切除法)をまれにするぐらいです。歯根が短くなる、また術後の再発のリスクがある療法を避ける事と、この症例のように全ての症例でScoopOut&Multi-Fiberpost法により良好な結果を得られているからです。
    
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右上1,2番のコアを除去すると感染歯質だらけでした. "一般的には“抜歯されてもおかしく有りません。これから感染歯質をエキスカで徹底的に除去してから、ラバーダム隔壁(マトリックス)を作り、根管治療に移ります。幸い感染歯質は歯の保存が出来る範囲で留まっていました。しかし歯肉縁上の残存歯質は殆ど無く、フェルールと呼ばれる歯の周りの壁(1〜2mmが無いとポストコアが脱落する、歯根破折をおこすと言われている)が無いばかりか、歯肉縁下に入り込んでいました=マイナス・フェルール。
Zitzmann NU,らはフェルールが全周1,5mm未満は”ホープレス”に分類するようです、すなわち”海外”の基準から言えば「一般的には」どころか「完全に抜歯」となる症例です。




根の先端の穴が大きく破壊されて、根尖孔外の軟組織が見えます。

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IMCにより穴を塞いでからMTA で封鎖、他の2歯も同様の処置を行いました. 4歯とも外科的処置は有りません。 象牙質を脆弱化する(歯根破折をおこす)=術中の次亜塩素酸ソーダ、EDTA等の薬物=は一切使用していません。 
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マルチファイバーポストコアによる“根管封鎖”中です。
”ガッタパーチャによる根管充填”ではありません、象牙質との接着による”根管内の封鎖”で、もちろんモノブロック構造が達成されている事が必須です.
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MTAでパーフォレーションを封鎖した後スーパーボンドを流し込み、複数本(マルチ)のファイバーポストを隙間なく補強の為に入れます。それと同時に(後日では駄目です)飛び出したファイバーポストを取り込んだ形で歯冠部用のコアレジン(複合レジン)で頭の部分の支台を築造します。

口腔内でポストコアから頭の部分(コア部分)まで作る方法をビルドアップコアと呼ぶようですが、最近発行の歯科業界誌に「前歯のビルドアップコアは”海外”では禁忌となっているのを忘れないでほしい」と書いている論文がありました。文中のみならずまとめの部分にも繰り返し禁忌だと記載されていました。失敗するからという意味のようですが、この症例でも現在全く何の臨床症状もなく良好に経過しています。この症例も”海外(欧米)”の基準では禁忌だから抜歯となるのでしょうか?


このように頭の先から根の先端まで大黒柱のように何本ものファイバーポストが通っていることが歯根破折を予防する重要なポイントです.途中で途切れていたり継ぎ足してあったり(つぎはぎ式ファイバーコア)、シングル(1本だけ)の
ファイバーコアでは強度は半減しますまた複数のファイバ−ポストを入れる時に、加圧根充のように圧を加えてはならない、「歯根破折を作る」ことになります。無圧下で挿入することが必須ですラテラルコンデンセーション=側方加圧法と似ていますが同じようにすればいいのでしょうか?と質問される先生がいますが、勘違いしてはなりません)

 
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後です、ガッタパーチャは一切使っていません



海外のため久しぶりに検診で来院されました、術後5年経過しました、根尖の病巣は消失して患者さんの自覚症状も全く有りません。
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【症例2】:
ポストコアの穴を開ける時に誤った方向に穿孔して、そのままポストコアを装着し、冠を被せてあった。その為に歯肉が腫れてきた症例
 
初診時レントゲン
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頬側からのレントゲンではポストコアの方向が誤っているようには見えませんが、ポストの陰になっている、向こう側(舌側)に大きな穴があいています。そこに出来た病巣が歯根の左側方まではみ出した形でレントゲン写真に写っています。

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上の2枚の画像は鏡像なので、上側が遠心、左側が舌側、右側が頬側です。パーフォレーションがやや遠心寄りにあるためにレントゲンの黒い病巣が遠心部に写っています。
パーフォレーション部をIMCにより処理後にMTAで封鎖.この後不良根管充填がされている根管の拡大を行い、マルチファイバーポストで根管封鎖となりました。


約1年9ヶ月後

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外科的処置はまったく行っていません


病巣は殆ど完治し自覚症状も全てなくなりました。第1大臼歯は再根管治療でマルチファイバーポストによる根管封鎖が終了し、これから冠をかぶせる予定になっています。
   

【大黒柱的ファイバーポストコア】について
4番も6番も根尖までファイバーポストが大黒柱のように頭のてっぺんから根尖まで途切れなく通しで、しかも1本のみ(シングル)ではなく何本も(マルチファイバーポスト)入っているのがよくわかると思います=これがもっとも大事なのです、根管だけファイバーポストが入っていても、歯冠部のコア部分と途切れていれば意味が有りません、根管部のみファイバーポストを入れて、後日歯冠部をコアレジンのみを継ぎ足してレジンコアを築盛する方もいますが、歯冠部はレジンのみでファイバーポストは通っていません。それでは歯根からの連続性が失われて強度は半減します.一体(モノブロック)にはなっていないので歯根破折の予防にもなりません。大黒柱ではなくて"つぎはぎ式ファイバーコアといえるでしょうか。


【根管封鎖+支台築造同時法】
今までの根管充填では、根管充填をしてからポストコアの形成をして、コアの型取りをします。その日はそれで終わり、後日コアを装着する。というのが一般的な手順です。それに対して1回で根管封鎖と大黒柱的コア築成を同時に達成できるのはこのスクープアウト&マルチファイバー法の利点の一つです。




 








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