【症例1】: 下の初診時レントゲン写真で上の前歯4本全て根尖孔がパーフォレーション(穿孔)して、それぞれの根尖部に病巣の黒い影が見えます。 初診時レントゲン このように、太くておまけに長い金属製の柱(メタルコア)が入っていれば、この時点で恐らく大多数の歯医者さんでは「うちではこれを取り除くことは不可能です、取れたとしても歯が割れる危険性があります。抜歯かそのまま放置して様子を見るしかありません」と診断されるでしょう。どうしても抜きたくないと言えば「最後の方法として、歯根端切除という方法が有ります。外科的に根の長さが短かくなりますが、先端を切断して、根の先から薬を詰める方法です」と説明されるでしょう。(しかし前歯では容易ですが、通常大臼歯の内側の歯根(舌側根、口蓋根)では難易度が高くなり、歯根端切除も不可能で抜歯と宣言される可能性があります。 短かくなるという大きな欠点ばかりではなく、除去できなかったメタルコアから根尖を切断したところまでに取残した根管内の感染物質の清掃は完全にできるはずもなく、根端窩洞に充填しても根管内の汚染物質は放置された状態で、埋葬(臭いものにふた)されたことになります。 しかし切断面に露出する根尖付近の神経の通路(側枝)やイスムス、フィンと呼ぶ根管内のすき間のような構造物等の封鎖が不完全であれば、そこから埋葬した(筈の)感染物質が漏れ出し、病巣が再発して失敗します。最低3mm切断する事が通説となっていますが、それとても統計的な一つの目安にすぎません。根管系の構造は簡単ではなく、人それぞれで出現する場所は様々です。マイクロスコープで確認しながらそれらを全て含む穴(根端窩洞)を開ければいいと言われますが、出血の中で見落とさない保証はありません。 歯根が長ければまだ耐えられるでしょうが、もともと歯根が短いなり歯周病で支持する骨が少ない場合は3mmも短くなれば致命的と言えるでしょう。 八ヶ岳歯科では近年旧来の外科的な歯根端切除は殆ど行っていません。 歯内的歯根端切除(当院オリジナルの、根管内から行う非外科的な歯根端切除法)をまれにするぐらいです。歯根が短くなる、また術後の再発のリスクがある療法を避ける事と、この症例のように全ての症例でScoopOut&Multi-Fiberpost法により良好な結果を得られているからです。右上1,2番のコアを除去すると感染歯質だらけでした. "一般的には“抜歯されてもおかしく有りません。これから感染歯質をエキスカで徹底的に除去してから、ラバーダム隔壁(マトリックス)を作り、根管治療に移ります。幸い感染歯質は歯の保存が出来る範囲で留まっていました。しかし歯肉縁上の残存歯質は殆ど無く、フェルールと呼ばれる歯の周りの壁(1〜2mmが無いとポストコアが脱落する、歯根破折をおこすと言われている)が無いばかりか、歯肉縁下に入り込んでいました=マイナス・フェルール。 Zitzmann NU,らはフェルールが全周1,5mm未満は”ホープレス”に分類するようです、すなわち”海外”の基準から言えば「一般的には」どころか「完全に抜歯」となる症例です。
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